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「コーヒー飲む?」
靄がかかった思考に、声が届く。頭の右半分が枕に埋まっているので、聞こえるのは左耳だけ。どっちからってのさっぱりだけど、枕に頭が乗ってて、右腹が下にきてるってことは、目を開ければきっとタンスが見えるはずで、声は背中の向こうからきてるわけで、隣の部屋に彼女はいるらしいということがわかる。わかったからどうでもって話だけど。 「飲まないの?」 いい加減起きるべき時間なのに、さっぱりやる気が起きない。夜更かしはいつも通りだったし、ちゃんと最後までできるぐらいには起きれていたわけだし、それでもここまで眠たいのはやっぱり体質なのかなぁとか思ったり、思わなかったり。思ってるんだけど。 「飲ーむー」 いかにも寝起きの声を張り上げ答える。 「かーもー」 暈してみる。 「いらないの?」 ちょっと悲しそうな声。 「ううん。ごめんなさい、飲みたいです」 「はいはい、挽いといてあげるから、すぐに起きてよ」 「あーい」 返事をして、半身からうつ伏せへ寝返りを進める。位置が変わった枕からは、彼女の匂いがした。にへら、と緩む。……ったく、 昨日あれだけしたのに、この程度でまた嬉しくなってしまうあたり、どんだけやられてんだよ俺、とか思う。思うけど、それはそれでいいのかなとも思う。超負け戦。 なんて1人惚気をしていると、隣の部屋からごりごりとコーヒー豆を砕く音が聞こえてきた。手動のミルを回す音。 彼女は昔からコーヒーが好きだった。大学の頃、彼女の家に行く度に、三角フラスコの口を短くしたようなコーヒーメイカーの容器がテーブルの上が鎮座していたのをよく覚えている。俺達はそれを挟んで、話をしたり、それぞれに本を読んだり、テレビを見たり、うっちゃってベッドに潜ったりしたものだった。彼女の部屋の匂いは、失礼な話あまり思い出せないのだけれど、コーヒーの香りだけはよく覚えている。むしろ、それこそが俺にとっての彼女の象徴だったりする。だから、こうしてまどろみながらミルの音を聞くのも至福の1つで、むしろ、そのためにここに来ていると言ってもいい。 「ほら、お湯沸いたよ」 だから、コーヒーに対してはとても厳しい彼女が怒って蹴飛ばしに来るまで、タイムアップぎりぎりまでは粘ってやるのだ。ぜーんぶいい訳だけどね。
こうじはいつも前を、半歩前を歩く。肩が触れない程度に、背中が見えない程度に、手を伸ばせば届く距離を、振り向かずに歩く。話す時も前を見たままで、まるで私には興味がないように、その癖、からかってやろうと足を止めたらすぐに気がついて、無言で私の前に戻ってきてぽかと頭を撫でる。ううん、撫でるってのはこうじの言い分であって、ぶっちゃけゴチンって感じで、ぶっちゃけすんごく痛い。だから、ぶんむくれてやるんだ。すると、今度は逆ギレすんなって怒られる。全く酷い話。全く正しいこうじ。全く酷い私。
それなのに優しくしてくれるから、無駄に優しいから、困る。ほんと、困っているのだ。 後ろがんばって書いてたんだけどうまくまとまんね。 没。 ふみが手を繋いでくれないこうじに煮えて、 こうじの方は手を繋ぎたいけどなかなかできなくて、 最後に早く来いって手を引く話。 の予定だった。うんこ。 | BLOG TOP |
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