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雪。
雪が降っていた。 灰色のビル間に広がるこれまた灰色の空から、真っ白な雪が粛々と降り出していた。 「こうじ、雪だよ」 「だな」 地下鉄へと通じる階段の上から三段目。俺が壁を背にし、ふみがその正面に立ち、互いの距離はないに等しい。その上で背へと腕を回してるこの状態は、傍から見れば抱き合っているように見えなくもないが、実際に抱き合っていたりするので仕様がない。一応、人通りの少ない末の階段を選びはしたものの、それでもちらほらと通る人達はいるわけで、その度に気まずい思いをしている、俺だけが。そもそも、壁側に立っていた時点で負けは確定していたのだ。 「なあ、まだか?」 「もう少し。まだ電池メーター2つ目ってとこかな」 「高速充電機能とかついて無いのか」 「ん? んん? それはちゅーをしたいってことかな?」 「ちげぇし! わかったから、大人しくしてろ」 見上げようしていたので、後頭部を抱えてきゅっと押し付ける。今の顔を見られるのは色々とうまくない。昔からポーカーフェイスは苦手なのだ。 押し付けた分、息苦しくなったので、少し深く息を吐く。奥の方から出て来た吐息は頻繁に出入りしているものと比べ湿り気が多く、より白く凍った。きらきらと目に見えそうなぐらい大きな結晶達が一瞬視界を覆い、散る。と、こんな風にどうでも良い当たり前に感傷を覚えるぐらいやられている時期なので、そりゃもう目なんて合ってしまったら全てを悟られてしまうに違うないのだ。それは困る。困るのでくしゅくしゅと撫でてやった。珍しく嫌がらなかった。 「ねぇ」 「どうした。もういいのか?」 「ううん。そうじゃなくて。考え直す気とか、ないのかな?」 「何のことだ」 「わかってる癖に」 「お前だってわかってんだろ」 頭にやっていた手を背中へと戻す。 「でもでもっ! 時間が解決してくれるとか、そういうのってあると思うんだよね」 「どうにかなるんだったら、とっくになってるだろ。なってないだろ。いや、そりゃ、俺はお前のこと好きだよ」 「私も好きだよ。だから、ね?」 「けど、それ以上に嫌いだ。好きが8で嫌いが6ぐらいだな」 「それだとやや好きってことで良いのかな?」 「そして、こいつ面倒臭ぇが20」 「ひどっ! それ、全然勝負になってないよっ!」 「だから別れるんだろ。そもそも付き合ってたかどうかも怪しかったけどな。ほら、そろそろいいか」 「今ので気分を害しました。あと5分追加です」 「そっすか」 どうでもいいけどね、なんて続けたらさらに延長されてしまいそうなので、胸に留めておく。そもそも、別れようと言い出したのはこいつなのに、それで呼び出されたのに、何を言ってるのだろうか。だんだんムカついてきた。 「ふみ、ちょっといいか」 「いいよ」 と言われたので、肩を掴んで少しだけ体を離す。 「え? 終わり?」 「終わらない」 空いた隙間に腕を入れ、ふみのあごに指をやる。ちょっと力を入れたら、すぐに理解された。全く、こういうところは感のいい奴なのだ。 「ほら、充電してやる」 ムカついたのであくまでも偉そうに。偉そうに重ねてやった。 | BLOG TOP |
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